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脱原発を決めたドイツの視察報告
日程:2012年1月22日~27日
訪問先一覧

みどりの未来のよびかけで、全国から脱原発への道を探しに、このドイツツアーに参加しました。

 2000年にできた再生可能エネルギー促進法。

 この法律で、ドイツは脱原発への道を歩んできましたが、
 決定的にしたのは、福島の原発事故でした。

『高度な技術の日本でさえ、事故が起きた』
 
 エネルギーシフトの3つの柱
 1.原発・火力発電を減らすこと
 2.再生可能エネルギーを増やすこと
 3.発電だけではなく、発熱も利用するなど、エネルギーの効率化を進めること
  原発でできた電力の不買運動
 再生可能エネルギー促進法は、いわば、原発でできた電力を買わない運動でした。
 ドイツでは、この法律で、エコ電力を買うと消費者が得するしくみをつくったのです。
 今、日本では原発反対といっても、そのかわりになる電力があるのかという点にひっかかり、脱原発
 にふみきれていません。

 ドイツは自治体単位での動きが中心で、都市事業公社が再生可能エネルギー事業の中核を
 になっています。
 また、自治体や市民が出資して作る第3セクターもあり、利益配当は自治体や市民に還元していま
 す。
  オブリヒハイム原発
 オブリヒハイム原発は、80万人を超える人口に電力を供給してきましたが、2002年2月11日にこの
 原発は37年間の運転を経て最終廃炉になりました。
 そのおよそ4年半後、キャンペーン「CO2カウントダウン」が開始されました。その目標として、2012年
 半ばまでにCO2を3万トン削減し、長期的には10万トンも削減しようとしています。
  バイオガスの原料
   太陽光発電と環境に配慮したエネルギー利用を
促進する会の会長のクリスティーヌ・デンツさんが
手にとってみせてくれたのは、バイオガス原料です。
  ハンガリー由来の草を育て、バイオガスプラントの原料に
 エゲンベルガーさんの畑です。

2.5mにもなるハンガリー由来の草を育て、それを
バイオガスプラントの原料にします。
エゲンベルガーさんは、バイオガスプラント経営者でもあり、都市事業公社が全量バイオガスを買い取っています。
 契約農家が草・トウモロコシ・糞尿を発酵させてバイオガスを
地下の発酵タンクは、1600㎥もあります。 
収穫された草やトウモロコシに糞尿をまぜ、発酵させたものを毎日18t入れて、1時間に1度750kgを発酵容器に入れます。 
 モスバッハ都市事業公社は供給を担当 バイオガス・プラント→コ・ジェネ・モジュール
 できたバイオガスは、全量、モスバッハ都市事業公社が買い取ります。

配管をとおって、2.3km離れたコ・ジェネ・モジュールへ送られます。
地域熱供給網は日本ではなじみがないですが、これはコージェネレーションによって温水を作り、
それを配管を通じて地域の家庭などに供給するシステムです。
電力を生み出すと同時に、熱を地域に供給しています。
 んなへの意識づけはしない。 関心のある人の割合をふやすことに力を入れる
 これは、元気がでる言葉でした。他にも、

● 『エネルギー政策は採算がとれる』 と、人を説得させること。
● 温暖化防止対策は、人間みな必要なことであり、節約にもなる。
● いずれエネルギーがなくなるのを覚悟するか。新しいエネルギーを作るかである。
● 日本は水素。 ドイツはメタン。
  水素エネルギーは新しいインフラが必要だが、メタンは既存のインフラでできる。
  ドイツは、革命より 進化を求める。
 原発以外でできた電力を安定的に使える仕組みづくり や人集め…マイエンハイム
原発以外でできた電力を安定的に使えるしくみづくりや人集めを、国が一斉ではなく、小さな規模でできるエリアからすすめています。そのひとつが、マイエンハイムです。

バイオガス発電施設での排熱を利用していますが、冬場のピーク時には不足分を木質ペレットの燃料で補い、地域暖房を供給しています。

熱の長距離供給は難しく、供給網4kmです。
2000年の再生可能エネルギー促進法によって、木質ペレットの熱を利用すると補助金があります。
結果的に、石油で暖房するより、経済的となり、賛同者がふえました。

 
 バイオエネルギー村マイエンハイム
 マイエンハイムには、
20人の住民の出資ではじめ、現在株主700人の市民企業が、電力と暖房を完全に地域自給しています。
エネルギーを外から買うと、資金も外に出ていきます。
マイエンハイムでは、熱3万ユーロ 電力6万ユーロが地域で循環しています。
また、地域での雇用の場がふえ、その賃金も地域内で循環していきます。
つまり、バイオエネルギー村は地産地消です。
 テュービンゲン市
 さて、、テュービンゲン市こちらはです。ドイツ連邦共和国南部の都市。

人口は約9万人。古くからの大学都市です。坂の多い街で、ホテルから歩いて市庁舎に向かいました。
 「キョウト」と「フクシマ」はエネルギーシフトを強調した言葉である
 テュービンゲン市長ボリス・パルマーさんを表敬訪問
しました。

2020年以降は、新しい議定書は作らない。だから
自治体で努力するのだと語りました。
個人が分散してエネルギーを消費しているのだから、
温暖化防止キャンペーンは数多く行い、 サポートする
か妨げるか 市民に判断できる情報を提供します。
 テュービンゲン市長の政策
 市長の政策は、環境最優先。
任期前より、自転車のインフラを10倍にし、市のエネルギー量への投資は3倍になりました。
また、新築する駅の省エネで学校の雨漏りの修繕を予定しています。
 温暖化防止キャンペーンの絵がテュービンゲン
 市庁舎のトイレに飾ってありました。
 なんだか、みているだけで楽しくなります。 
 温暖化防止キャンペーンの重要な協力先テュービンゲン事業公社
 テュービンゲン事業公社から眺めた市内です。
太陽光発電を取り付けている建物の多くは、企業や
マンションでした。
 テュービンゲン市の熱供給事業 コ・ジェネ・モジュール 地域熱供給網
 ドイツでは、1914年、ガス供給網の次に熱供給網は
ありました。
このテュービンゲン市でも、1930年、58年に、大学 が
自給をめざし、建設しました。地図の中央部分です。

その後、テュービンゲン事業公社も熱地域供給網を
すすめました。
1984年はじめて発熱・発電をまとめて供給しました。

 地域熱供給網 暖房
各家庭には、熱交換計があり、熱湯を住宅内で使います。冷えた水は発熱所に戻ります。
家の古い暖房用機械を新しく購入の際、エコ電力に契約すると得になる法の整備がされています。
このような暖房は、宿泊するホテルでもありました。
 
 産業が中心の州。半分は原発のエネルギーを使用。
 州の環境大臣フランツ・ウンターシュテラーさんを
表敬訪問しました。
駅の上に、自動車会社のシンボルマークが飾られて
いるのに象徴されるほど、産業が中心の州です。
半分は、原発のエネルギーを使用しています。
 産業界からの反対は?
 電力不足を避けるために、廃炉に合わせ、計画的に再生可能エネルギーをふやす計画です。

日本では、産業界から電力の質を求められているが、ドイツではどうかをたずねたら、
産業界からは、安定的な電力の供給があれば、反対はない。と即答され、びっくりしました。

連邦政府の決断で、原発は5か所のうち、稼働しているのは2か所。
 (2019年廃炉、2022年廃炉予定)
廃炉になると4500kwが短期間で供給できなくなる。2022年までに、風力は1%から10%に。
太陽光も毎年ふやす計画。
 再生可能エネルギー促進法の補強を 州の法律で
 連邦政府の法律の足りない部分を州の法律で補っています。
熱需要20%は再生可能エネルギーでまかなうこと
暖房装置交換は、熱利用の10%は再生可能エネルギーにすること
そして、それらを、既存の住宅にも適用できるよう法の改善中です。
 放射性廃棄物処分場
 ドイツでは、廃坑になった鉱山に処分する方法が
とられています。
アッセとモアスレーベンでは、すでに地層処理されて
います。
今回、視察したのは、コンラートとゴアレーベンです。
のちに詳しく説明します。
 鉱山法では詳細な処分方法はない 
 モアスレーベンと アッセの最終処分場は、鉱山法
に基づき、処分されたので、詳細な処分の方法は
ありませんでした。
  どんな放射性廃棄物がはいっているのか
 どのドラム缶に、どんな放射性廃棄物がはいって
いるのか、わかりません。
  放射線量がどのくらいか
放射線量がどのくらいのものなのかも、わかりません。
 
  岩塩層
1978年頃、岩塩層のアッセ処分場に12万6000個
の低レベル廃棄物のドラム缶を搬入しました。
その後、水が溜まり、汚染し、ドラム缶が腐食したり
と、ずさんな処分方法が問題になりました。

  コンラート最終処分場への 処分方法
コンラート最終処分場へは、非発熱性、つまり、中低レベルの放射性廃棄物を処分する施設です。
新しくできた原子力法に基づき、処分方法がこまかく決められています。
緑の部分は、粘土層です。地表から地下400mまであります。
その下の青い部分は、鉄鋼層です。 地下は乾燥していることを何度も強調して説明していました。
従業員は現在ある、左側の第一坑道から地層処分地に入ります。
これから、右側に第二坑道を建設し、廃棄物はこちらから運び入れる計画です。
そして、ここには、
業界の原発の廃棄物が、58%
連邦管轄の研究用原発の廃炉でできた廃棄物が、35%処分されます。
  分類してドラム缶に保管 プラスチックは燃やしてから保管
分類してドラム缶に保管。プラスチックは燃やしてから保管します。
 金属を入れたドラム缶は、圧をかけ小さくする。
 金属を入れた、ドラム缶は、圧をかけ、小さくします。
  現在は、中間処分地で中身を記載し,保管。
 現在は、中間処分地で中身を記載し、保管しています。
 20tのコンテナが5000個中間処分地(研究センター内)に保管 
 船に載せる程の20tのコンテナが5000個中間処分地(研究センター内)に保管されています。
コンテナ内の隙間にコンクリートを入れる場合もあります。
 輸送 
クレーンで台車に載せ、外から線量を測り、№を
チェックします。
輸送は、公の道をトラックで20% 鉄道車両で80%です。
 
 処分が終わるのは2040年 
 地下1000mに、高さ6m。幅7m。長さ800mの廃棄物を処分するトンネルを掘ります。
コンテナの間に、石の層。トンネルの隙間に、コンクリートを流し込みます。

処分が終わるのは、2040年です。
 連邦放射線防護庁 
連邦放射線防護庁は、連邦の直轄機関であり、環境省が委託し、連邦放射線防護庁で処分場建設
を外注したり、管理をします。 
 業者が処分場を建設 
業者が処分場を建設します。
費用は、国が立て替えますが、電力会社は、廃棄物をここに処分するときに、支払うことになって
います。
企業の責任として、廃棄物処分まで考えて行うのは、当然のこと。すでに、廃炉になった
オブリヒハイム原発は、6億ユーロを積み立てていると説明を受けました。
  連邦放射線防護庁は情報公開
 連邦放射線防護庁は情報公開を基本にしています。地下は30度ほどで汗をかくというので、衣服をすべて着替えました。

安全に関するチェックは厳しく、酸素マスク。酸素ボンベ。ヘッドライト。ヘルメット装備。1939年にできたエレベータに乗り、地下1000m到着。
そして、ジープで移動。
 迷路のように、ジープは、地下トンネルを走ります。必要なところだけに酸素を送るために、このように、いくつも扉があります。途中、何度も扉をあけては閉め、進みました。
  高レベル廃棄物最終処分場
   こんなに、注意深く時間と労力、金銭的にも駆使して最終処分しても、放射線量で比較すると、非発熱中低レベル放射性廃棄物は、0.1%、
高レベル放射性廃棄物は99.9%もあります。

そして、高レベル廃棄物最終処分場はまだ決定されていません。


 翌日は、ベルリンから北へ北へと電車とバスで、
 ゴアレーベンの高レベル最終処分場の選定候補地
 に向かいました。
 ゴアレーベンの地質は岩塩ドームになっています。
岩塩の地層は徐々に収縮していくため、放射性物質を閉じ込めるのに適する。
少しずつ地層が上に移動していて、100万年後には地表に露出するが、その頃には無害化されている。」と説明がありました。
  処分場として適切か調査中
 化学、科学、物理学、力学など様々な観点から地質学者クリスティアン・イズリンガー氏が説明
 ここで働く人々が原発ゴリ押しの偏った立場ではなく、中立的な視点で調査や説明をしていたので、不思議に思い、質問しました。

日本と違い、ドイツでは政権交代が何度か行われてきたため、一方的な原発推進策が取られず、その結果、現場が推進派で固められるということもなかったという説明に納得できました。

さまざまな観点から、処分場として適切か調査中です。
  最終処分場の候補地とされたゴアレーベンの反対運動
 最終処分場の候補地とされたゴアレーベンは、長年反対運動を続けています。
選定地がゴアレーベンだけしかなく、なぜ、候補地に
なったのか。選定地は複数から選ぶべきだと、主張し続けてきたのです。
今、複数個所選定し、その中から候補地を決めることになりました。
また、連邦放射線防護庁は、選定した場所を調査しますが、候補地にするには、国民の質問にすべて回答してやっと環境省が処分場建設の許可を出します。
  黄色いプラカードはゴアレーベンの反対運動のシンボルマーク
反対運動の牽引者、マルティナ・ラマーズさんが、
市民運動を成功するポイントを教えてくれました。

① いい人脈
② 情報提供
③ 何回でもデモや・プラカードでアピール
④ 行政機関に入り、内部から変えていく
⑤ 協力相手は他の組織から探すこと
 最終処分地候補 ゴアレーベンを対象にした調査委員長 
 今回の視察先をコーディネートしてくださった連邦議会議員 ジルビア・コッティング=ウールさんです。

3.11後、震災・原発の被災地や日本国内の原発を何度も視察。 
最終処分地候補ゴアレーベンを対象にした調査委員長でもあります。
  ゴアレーベンが候補地として適切ではない2つの理由
①坑道の壁から石油がにじみでていること
②岩塩層の下には、ガス層もあること


処分場は複数の候補地をいろいろな分野の専門家の検証をもとに選考することになっている。

選考する法をつくり、国民に説明する責任も盛り込み、国民も単に反対ではなく、決定するまでに、質問や意見を出す機会が与えられている。
その過程を大事にし、納得する処分場を建設する。」と語っていました。
とても民主的だと感じました。
 「脱原発への道」 希望という道しるべを胸に
 ドイツの脱原発への道もけわしく、でも、あきらめない、粘り強さを強く感じました。
それは、私たちの道しるべとなり、希望を持ち帰ることができました。

 

気が遠くなる話だが、原発を稼動し続けることは、
最終処分場建設を先送りするだけでなく、
最終処分する場のない高レベル放射性廃棄物をふやし続けるということ。

フランスとドイツの国境にもフランスの原発がある。
ドイツは、国内だけで解決できないことを原発に頼っている国。
その近隣の国にもこのさまざまな取り組みや活動することで、
地球規模で今後の方向性を見つめなおし行動を。
と警告しているのではと感じた。

また、日本では容器包装リサイクル法があり、廃棄まで。
また、再利用を考えて商品を販売するようにリサイクルだけでなく、
リターナブルやリユースも企業が努力するようになっている。


不思議。

廃棄場所がないものを作り続けている原発。

使い続けている原発。

使い続ける限り、行き場のない廃棄物はふえる。

原発をとめても、管理するだけでも廃棄物は増え続ける。

廃棄物を処分することまで取り組まなくてはと改めて思った。



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